出産の社会デザイン学
少子化消費化社会における出産

2008年第2回平塚らいてう賞受賞報告会論文
-----出産体験者の経験と意識に関するアンケート調査を事例として

1.はじめに
 昨年1月、当時の厚生労働大臣が「女性は産む機械」という発言をし、物議をかもし出した。しかし、少子化対策を講じる国のこうした本音とは裏腹に女性はもはや「自動的に産む性」ではなくなっているのは周知の事実である。
 かつてフェミニズム議論の中では、女の生殖機能を強調した議論は、とかく女を『産む性』だけに還元する口実を与えることになりやすく、生物学的性差を理由に女に対する政治的、経済的、社会的な差別が正当化されてきた過去を思いださせると指摘されてきた(荻野:2002.71)。女性の生殖能力や身体的特性に過剰な意味を付与することは、本質主義的であるという批判を受けてきたのである(同.11)。こうしたことから「妊娠」「出産」「授乳」およびそれら「生きられた身体」をどう位置付けるのか、積極的な議論は行なわれてこなかった。しかし「結婚」「出産」は個別的領域として捕らえられ、選択的となり、出産身体への社会的認識は様変わりしている。「出産」は「未妊」「避妊」「不妊」「生殖補助医療」「代理出産」など、性と生殖に関するリプロダクションのさまざまな側面のひとつとして位置づけられるようになってきている。

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