マタニティ・ヨーガ
ゆったりリラックス

 一連の体操をおよそ1時間やったあと、シムスの体位か自分が一番楽な寝入るときの姿勢をして、リラックスする。ヨーガではリラックスは体操と同じくらい重要なポイントだ。伸ばしたからだ中の筋肉を緩め、心をも十分にリラックスさせる。

 私の場合は、ここでヒーリング的な音楽をかけている。ヨーガでは音楽を取り入れないという考え方が一般的だが、私の場合は自分が妊娠していたころ、音楽をかけたリラックスがとても気持ちのいいものだったので、音楽を流すことにしている。最近のお気に入りは『クリムゾン・コレクション/シング・コウル&キム・ロバートソン』。女性ボーカルのチャント(なんども同じフレーズを繰り返すお祈りのような歌)ミュージックだ。

 音楽を流しながら、まずはからだから力を抜くように、やさしい声で誘導する。これは、アメリカなどのセラピーでよく行われているイメージ誘導に近いものだ。「全身の重みを床に落として、筋肉を緩めていきましょう。まず、足先の力を抜いて。ふくらはぎも緩めます」といったように、ゆっくりと、足の先からふくらはぎ、もも、腰、おなか、手、肘、肩、首、顔、頭の順に力を抜くように誘導する。このときの誘導者の声は、静かにやさしく語りかけるように。この声かけによって、参加者のリラックス度は異なってくるので、これには若干の経験と感性が必要だ。そのあと、音楽を流したまま、静かに10分ほどリラックスに入る。

 初めて参加した人は、リラックスと言われてもなんのことやらわからずに、なかなかうまくできないのだけれど、回数を重ねるうちに、これがほんとうに気持ちよくなってくる。中にはスヤスヤと寝息をたてて眠りこんでしまう人もいる。ヨーガ的に言えば、眠ってしまってはいけないのだけれど、緊張がほぐれている証拠でもあるし、熟練していけば眠りこんでしまうことはなくなるので、私はさしつかえないと思っている。

 このとき、参加者がうまくリラックスしていればしているほど、部屋の空気全体が穏和になるように私には感じられる。何人かが緊張していたり、部屋の外がうるさかったりすると、こうした落ち着いた雰囲気にはなかなかならない。空気そのものが落ち着いてくると、私は「おなかの中の赤ちゃんも気持ちいいと感じているんだろうなあ」と感じる。それが、とてもいとおしく思える。

 クラスには、妊婦さんの顔しか見えないけれど、おなかの中の赤ちゃんも確実に参加しているのだ。その顔の見えないおなかの中の人たちも、このときばかりはお母さんといっしょに、ゆったりしているに違いない。私自身は、このとき、あぐらをかいて瞑想をしているのだけれど、赤ちゃんたちの気を感じることができる。おなかの中の赤ちゃんを身近に感じられる瞬間だ。

 10分たつと、「もとの状態に戻していきます」と声をかけて、ゆっくり伸びをしてもらう。このとき、急に起き上がると逆効果になってしまうので、ボーッとした状態を少し味わってもらってから、ゆっくりと起き上がるようにする。このボーッとした感覚は、瞑想のときの意識状態に近いものがある。瞑想は、やろうと思ってもそう簡単にできるものではないのだけれど、リラックスのあとのこの意識状態には、数回参加しただけの人でもけっこううまく入っていける。このボーッとした意識状態が、ソフロロジー法で言われるところの「ソフロリミナルな状態」(眠りに落ちる前の意識)なのだ。この状態のとき、頭はとてもリラックスしているので、普段頭でごちゃごちゃ考えている知性や感情が抑えられて、不安や緊張が薄れた状態になるために、からだは本来の働きをすると言われている。

 ストレスが内臓の働きを鈍くすることは知られているが、お産のときにも同じようなことが起こる。子宮は本来の収縮をしたいのだけれど、不安や緊張のせいで働きが鈍ってしまうのだ。心もからだもリラックスしているこの状態のときには、ストレスを起こす因子が薄れるので、子宮は本来の働きを十分にすることができ、お産もスムーズに進むというわけだ。

 もちろん、お産のときには陣痛の痛みをともなうので、ヨーガのクラスで得たリラックスをそのまま実践できるわけではないが、それでも理論的にはそういうことを知っておいてもらうことができるし、からだはリラックスした状態を覚えている。実際、ヨーガをやった人たちは「リラックスがうまくできた」と感想を述べる人が多い。


































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