お産ワンダーランド
世界お産 第1回 拡大スペシャル 世界の分娩室から

たまごくらぶ   2004.11月号

○わくわくドキドキ、お産はおもしろワンダーランド
 お産って、とってもおもしろい。私はいつでもそう思っているのだけれど、世間はどうやらお産について誤解しているようなのだ。痛いとか、苦しいとか、生々しいとか。およそ美しくない形容詞が並ぶ。ほんとうは「痛いけれど気持ちいい」「神秘的でセクシー」がお産のだいご味なのだけれど、病院の分娩室のものものしさが、お産のイメージを手術かなにかみたいにおおげさな医療行為にさせているんじゃないかと思う。

 わくわくドキドキが好きな私はでっかい地球を感じたくて、世界各地へのこのこと出かける旅をしてきた。ありがたいことに、人がいればそこにはお産があって、その土地の話を聞くことができる。国によって文化や言葉や風土が違うように、お産にもさまざまな文化や形がある。そんな取材を続けるうちに、すっかり私はお産のとりこになってしまった。
 今回はまず、分娩室のお話。「世界のホテル」みたいに、おしゃれでゴージャスな施設が並んでいるわけではないけれど、プチホテルのような病院や、自宅のようなバースセンター、老舗旅館のような産婦人科もある。さらに各地の文化の特徴を生かした施設づくりをしているところもある。お産の場合、問題なのはサービスや外見ではなく、医療技術とケアの中身。それがお産にとって一番大事なことはもちろんだけれど、今はそれプラス快適性という要素が産院に求められているのだ。

○管理出産から自然傾向へ、世界の病院出産が変わってきた
 20年ほど前まで、先進国の出産はどこも医療にガチガチに管理されていた。手術室のような分娩室で、モニターの監視装置をおなかに巻いて、分娩台の上で仰向の姿勢で動けない。出産は管理されてこそ安全が守られるというのが一般的な考え方だったし、産む女性たちも「そんなもんかなあ」と思っていた。ところが、そうしたお産はけっこう辛い。それこそ「痛い」「苦しい」で、あまりそれが高じると誕生の喜びまでふっとんでしまうこともある。それに気づいた欧米の女性たちが「これって何かおかしくない?」と声を上げたことが、そもそものはじまりとなり、さらに自然なお産に理解を示す医師や助産師が現われて、病院は少しづつ様変わりしてきた。
 まず見直されるようになったのが、分娩室の環境。産婦がリラックスして過ごせるように、陣痛室と分娩室と産後の回復室をひとつしたLDR という部屋がつくられられた。そして、分娩台の上で仰向けに固定されていた出産姿勢がだんだん上体を起こす姿勢へと変化してきた。日本では、LDR室をとり入れている施設はまだ少数だけれど、欧米ではすでにかなり普及している。
 その根底にあるのは、女性が安心して満足のいく出産ができる環境を整えるというコンセプト。女性にとってお産が幸せな営みになれば、赤ちゃんも幸せ。世界はちょっと、変わるかも。

セアラ州は、ブラジルの中でも赤道にほど近い東北部にある。
セアラ州は、ブラジルの中でも赤道にほど近い東北部にある。

●ブラジル
セアラ州アラカチ/セント・ルイーザ・マリラッキ病院
帝王切開王国、ブラジル。そんなブラジルで自然なお産が少しずつ広がりはじめている

あたたかいケアで帝王切開率が下がった
 ブラジルは全体のおよそ40%が帝王切開という、世界でも有数の帝王切開王国。サンパウロやリオなどの大都市では、帝王切開率が90%を越える病院もあるほど。とはいえ広大なこの国は、アマゾンなど医療がまだ届かない僻地も多く、そうした地域では医療者のいない自宅出産が行なわれている。
 地方の小さな町では、都会のような行き届いた医療を受けることはむずかしい。ほとんどの人が病院で出産しているけれど、助産師がいないこともあって、これまで質の高いケアはなされていなかった。そんな中、この病院では日本の助産のやり方をとり入れて、看護師たちが産婦の背中をさすって励まし、自然なお産にとり組むようになり、帝王切開率を下げている。

先端的な医療設備はなくても、あたたかいケアで満足のいく自然なお産ができる

地方では子だくさん家族が多い。
地方では子だくさん家族が多い。先住民インディオに習って、
ハンモックで寝ている家庭も。ベビーベッドもハンモック。


お産がはじまると看護師やお手伝いの人が腰をさすってくれたり
お産がはじまると看護師やお手伝いの人が腰をさすってくれたり、うちわであおいでくれたり。この病院では自然な陣痛を促すために立つ、腰かけるなど上体を起こした姿勢をとることをすすめている。


分娩室はいたってシンプル。
分娩室はいたってシンプル。最新鋭の機器は見当たらない。ブラジルでは助産婦がほとんどいないため、介助をするのは医師か看護師。分娩台は簡素ではあるけれど、つかまっていきむためのバーが上についた特注もの。


16才の初産婦。
16才の初産婦。それでもおっぱいをあげる手つきは手慣れたもの。子どものころから子育てをしている先輩を身近に見てきたのだろう。入院は産後わずか1日。退院するときは、白いドレスを着て赤ちゃんもおめかし。